錬金術と四つの精霊
Alchemy & The Four Elements
錬金術というとなにやら妖しげで、原始科学といった感があるが、
自然に秘められた未知の力を引き出し、より素晴らしい世界を実現しようという高尚な学問である。
16世紀初頭、ドイツ他ヨーロッパ各地を放浪した錬金術師パラケルススは、医術・天文学でも
大先生だった人物だ。そのパラケルススが、真理を求めるうちに辿りついたのが、四大元素である。
すでに、古代ギリシャで生まれていた四大元素(火・水・地・風)は、世のあらゆるものを生みだす元。
そして、パラケルススは、錬金術の世界観から四つの精霊を定義し、火・水・地・風のそれぞれに
対応させたことで、四大元素について、生き生きとしたイメージが育つようになった。
それでは、錬金術師パラケルススが、四大元素に対応させたことで有名になった
四つの精霊とはどのようなSpiritsなのだろうか?
シルフ Sylph(風の精霊)
蝶やトンボのような羽がついている。日本で、妖精と聞いた時、近いイメージ。
人間の目には見えないものである。言語の由来は、ギリシャ語で小さな昆虫を意味する?シルファ″。
あるいは、ラテン語で、森を表す?シルウァ″と、ギリシャ語の?ニンフ″を合わせて?シルフ″。
つまり、風の精?シルフ″は、?森のニンフ″だ。古代でも中世でも、神話や民話には、風が
山の上の森の中に棲んでいるという設定がよく出てくる。水が高いところから低い所へ流れるように、
風もまた、山の上の高みから人間の住む下界へと降りてくるのだ。風の精シルフは、
軽快で自由で美しく生き生きした精霊ということになっている。
サラマンダー Salamander(火の精霊)
トカゲまたはドラゴンのような姿をしている。燃えさかる炎の中でも冷静沈着な火の精霊。
火は物質の状態を変化させ、異なる性格を引き出したり不要物を燃やして浄化したり、
錬金術の研究の上で、重要な役割を果たす。火は無慈悲で強力なもの。
火に対応するエネルギッシュなサラマンダーは、確実に変化と浄化をもたらす精霊だ。ところで、
サラマンダーは紀元前から有名で、19世紀頃まで実在すると信じられていた幻の生き物である。
紀元前のサラマンダーは、姿は黒トカゲ、背中に黄色やオレンジ色の斑点がある。
たいへん火に強く、消火もできる生き物。体が氷のように冷たく、火に入っても平気。
火を弱めたり消したりもできる。炎の中で暮らし産卵する。くつろいで、エネルギーを得る。
いつも熱い火を探している。キリスト教の聖職者も、「燃えさかる火をかいくぐってもビクともしない
サラマンダーのように、堅い信仰心をもとう」という話をしていたそうだ。
ウンディーネ Undine(水の精霊)
長い髪の美少女あるいは若い美女の姿をしている水の中に棲む精霊だ。
液体である水の柔軟な力を備えている。言語の由来は、波を意味するラテン語の?ウンダ″。
言語学でも英語のウォーターの語源をたどればラテン語の?ウンダ″が含まれているらしい。
人が水に動きを感じていたから水が波になっている様は生き物のよう。堅い土も水がかかれば
柔らかく緩み動きがでてくる。パラケルススの錬金術でも水の力に注目し、水は地球にとって血液だと
いっている。水が生き生きしていなければこの惑星は、すぐに死んでしまうのである。
ノーム Gnome(土の精霊) 
体長50cm程度、長い髭をはやした小さな男の精霊。修道士のようなフードをかぶり、
土の中で暮らす寡黙な小人だ。土は固体なので、頑固じいさんのような性格でもある。
語源はギリシャ語の?ゲ―(土)″と「ノモス(法律あるいは法律によって治められる居住地)」を
合わせたゲノモスが有力。英語の発音では語源のgが無視されてノーム。パラケルススが使っていた
ドイツ語ならグレームである。ノームはすいすい泳ぐように土の中を移動できるし、土の中で自由になる。
大地に棲むノームには土の中のものを守るという役割がある。地中には錬金術に必要な
あらゆる鉱物が隠されており、地中の宝物を守り管理していくのがノームの仕事だ。
1937年のディズニー映画「白雪姫」の七人の小人は、ドワーフとよばれ、鉱山の仕事をしている
妖精だが、体が小さく、ノームとよく似ている。
参考書籍